五代目の挑戦

  • LEXUS NEW TAKUMI PROJECT 2017

LEXUS NEW TAKUMI PROJECT 2017に参加。
新たなプロダクト「KYO-SOKU」が誕生するまで。

LEXUS NEW TAKUMI PROJECT 2017とは、レクサスが主催となり、日本の各地で活動する、地域の特色や技術を生かしながら、自由な発想で、新しいモノづくりに取り組む若き「匠」に対し、地域から日本全国へ、そして世界へ羽ばたくサポートをするプロジェクトです。
そのプロジェクトに2017年の5月に公募して、6月の発表から7か月が経ちました。
僕は職人であるが、あまり新しいプロダクトを考えるような仕事ではなく、新たなモノづくりに挑戦は、ほぼほぼ初めての試みでした。まさに挑戦の一言です。
全くないところから、出来ることなんて早々ないといつも思っているので、何かヒントはないかということから、いつも仲良くして頂いているstudio pointの澤田さんに相談をし、とにかく色々と話、ヒントをもらった。「具体案が出来たら絵描いてあげるよ~」なんて言われたから、遠慮なくお願いすることに。
そんなこともあり、公募の資料作成から始まった。それから自分なりの思い、愛知県ならではのこだわり、使うことも考えとにかく作りたいものを明確化し、公募ギリギリまで考え、送った。

愛知県の匠として選ばれる。

数週間後に事務局より連絡があり、愛知県の匠に決まったと。それから6月のキックオフセッションの時に初めて日本全国の全51人の匠の皆さんと会うことに。
知っている方はもう一人の愛知の代表の方(東京・大阪・京都・愛知は二名選出されています)のみで、当たり前だが、全く知らない方ばかりで、かなり緊張しました。懇親会のINTERSECT BY LEXUSはさすがレクサスと言えるくらいラグジュアリー感たっぷりの落ち着いた空間でした。

不評のサンプル。

翌日は高輪のレクサスのディーラーで説明会。その時、初めてサポートメンバーの方やメンターの方にお会いし、提出した資料とサンプルを持ち込み確認をしてもらう。僕の中では選考に通ったから、まずまずの評価は頂けるだろうと思っていました。しかし全く別で、結果厳しい意見ばかり。サンプルは全く良い評価されませんでした。ここで今回の初めての挫折です。当たって砕けろと挑戦したけど、ただ砕けただけでした。

何日も続く試行錯誤。

それからエリアコンサル(メンターの生駒芳子さんが愛知県まで来ていただき、見ていただく機会)がある9月までに何とかしないと、と気持ちばかりが焦り、時間が過ぎていきました。ふとん作りが終わってから夜になり、サンプルを眺めながら考える。そんな日々が続きました。一先ずサイズのサンプルを作り、仕様のサンプルを色々試し、絵を描いてみたり。その間に澤田さん・holkの山本さんsacraの田中さん・jacouの田内君に見てもらい、色々と自分なりに変更点を見つけた。

答えが形になるまで。

でもまだ決まらない。納まりが悪い。何をしても付けた感が出てします。キックオフセッションの時にサポーターのグエナエル・ニコラさんから頂いたアドバイスが気になっていました。生地の端が付いてるところを持ち手にすれば良い。簡単に言うけど、点で付いているから、今のままでは切れやすい。しかもここは手縫いの部分だからどうしても縫い目が割れやすいのです。そんな時にレクサスのHPを見ていて、あれ?これいけるんじゃない?と思い、この形が生まれました。

レクサスから得られたアイディア。

レクサスブランドの顔でもある、スピンドルグリルっぽい。しかも縫製の仕方が僕の好きなワークスタイルにある縫い方。強度がでれば切れる心配がなくなる。
「これ良いじゃん。」しかも縫製を強化することで、把手としての役割が出来る。
しかし、この縫製だと、そば殻を入れる口が出来ない。後からのミシンでの縫製は無理。手縫いでやってみるとか・・・。片方に房を付けて違うものにし、アシンメトリーにしてしまうか・・・。試作してみたけど、根本的にかっこ悪い。また三面に縫い目がないのに、一面だけに縫い目が出てしまう部分がある・・・。どうしたものか・・・。縫い目が一面に出るのが不自然なら四方にあればおかしくない。しかも国家検定の1級のかいまきを作った時にならった縫製の技術で問題解決にもつながる。これで上下左右どこで使っても同じ心地になる。綿入れも以前組合で変わった座布団の入れ方をしていた方のを思い出し、試してみた。これが一番しっくりくるし、ずれない。まさかの方法だ。

何とかここまで来た。あと少し、あと少しと思いながらと、ついに9月に。生駒さんに来ていただいた時に「8~9割完成してるね」その言葉を聞き、本当に安堵した。キックオフセッションの時のダメな感じを払拭出来たように感じた瞬間でした。

見せる伝えるプロダクト。

しかしまだまだ試行錯誤は続き、サイズ感・伝え方・パッケージ等々。今までは作って終わりが多かったのですが、今回はそうはいかない。プロダクトとして完成度の高いものを発表しなくてはと思いが強かった為、また悩むことに。そんな時SYNCの茂ちゃんと話していたら、撮影に来ていいよ~って言われたからすぐに撮影へ。茂ちゃんはプロトタイプを使ってくれていたので、すぐにコンセプトも分かってくれた。良さそうな場所を決めて撮影へ。素人の僕が撮るので、伝わるかわからないが、自分で考えたものだからこそ、全てを自分で決めたい。
ここも挑戦の一環だと思い、やることに。使い方が色々あった方が良いので、とにかく思い当たることをたくさん撮った。さぁ良い感じになってきた。
パッケージはいつもお世話になっている近所の箱屋のKPCさんでお願いをして助けてもらい、完成してきた。父が持っている浮世絵からインスピレーションし、箱まくらっぽいイメージにしました。

いよいよ披露。

次に11月のプレ・プレゼンに向けて、パワポのデータも作り、プレ・プレゼンへいざ出陣!!

びびって緊張しながら、メンターの方々とスーパーバイザーの小山薫堂さんを目の前にして、3分間のプレゼンへ。緊張しながらも予行練習を何度も繰り返しやったおかげか、特に失敗はなかった。
全てを自分でやったおかげで、質問されても意味や説明は十分に出来た。
結果はすごく好評だったので、一先ず安心をし、帰路へ。ここまでやったのだから、自分の中では納得のいく評価を頂けた。でもまだまだ終わらない。

1月17日の本プレゼンまで、年末年始を挟み、約1ヶ月半。ふとん屋の年末は驚くくらい忙しく、12月は手つかずのまま年明けへ。そんな時、12月に16 Design Instituteの鈴木さんと会う機会があり、パッケージについて相談へ。話を聞いてもらい、ラベルを付けることに。

年が明け、ラベルも決まり、そんなこんなで東京に荷物を発送へ。うんうん、もう完成だ!!思い残すことはない!と思いきや、資料を見直すと、昨年のプレゼンの様子があるじゃないですか。しかもブースに皆展示をし、ちゃんとしてる・・・。
僕は商品を送っただけだから、これはヤバい。その時鈴木さんが一言。「店にある桐箱のふた展示台にしたらいいじゃないですか。」聞いた瞬間、「凄ッ」ってなりました。よく見てますね~流石です。気付きもしませんでした。

また出発日の午前中までリーフレットなどの販促ツールもギリギリまで作ってました。

そんなこんなで当日荷物一杯で新幹線に乗り、会場へ。会う人・会う人に荷物送らなかったの?なんて言われるほど大荷物。出掛けるときに父に「グランプリの時みたいだな(笑)」って言われ、そういえば技能グランプリの時も前夜まで用意して、荷物が重すぎて大変な目にあったな。
あの頃から前の日まであたふたしてるから、そんなに変わってないかも。さて、会場につき、いざ展示へ。
うん、桐箱良い感じ。かなり良い。今度から何かある時はこれだな。 翌日の本番の朝礼になり、メンターの生駒さん・下川さん・川又さんの話の中で、挑戦することについて話があり、お三方共に違った見解で話をして頂き、俄然やる気が出てきました。
当日はたくさんの来場者があり、緊張もしましたが、匠の皆さんにも勇気付けられ、皆で成功へと突き進みました。

これから先に続く出会いと広がる可能性。

良い出会いもあり、皆の行動に未来を感じました。
最後に小山薫堂さんに作って欲しいと言われたのが本当にうれしく、たくさんの方にも作って欲しいと言われ、このプロジェクトに挑戦した甲斐があったなぁ、と感慨深くなりました。またLEXUS NEW TAKUMI PRIJECTとBEAMSjapanのコラボレーション企画にも採用が決まり、展示をして頂きました。

今回新たな挑戦を試みた結果ですが、非常に自分の成長に繋がったと思います。
小山さんが話していた、「これまでの7か月間で今までの自分とは違う新しい何かに辿りついたと思います。そしてこれがゴールではなく新しいモノづくりのスタートです。」
この言葉は本当に心に沁みました。
今まで僕が経験してきたこととは全くと言って良いほど考え方を変えなければいけませんでした。普段のふとん作りは勿論手を抜かず全うすることが自分の仕事ですが、その技術を使い新たなプロダクトを作り上げたことは自分にとっても大きな前進だったと思います。

40歳になるこの年にまだまだ進歩は出来ると確信することが出来ました。
関わってくれました皆様のお陰で、出来上がりましたこと本当に感謝しております。また51名の仲間と共に同じ時間を共有出来たことに嬉しく思います。