五代目の挑戦

  • 令和4年度
    「現代の名工」
    卓越技能者表彰 受賞

丹羽ふとん店 五代目 丹羽拓也
「現代の名工」を受章後、布団職人を振り返る

この度、私、丹羽拓也は令和4年度の「現代の名工」(卓越技能者表彰)を受章する事になりました。私はまだ44歳と職人としては若年なのですが、この表彰を受章するという事は、一つ区切りが出来たのだと感じています。しかし自分自身の中で、何か変わった事はないというのも事実なんだと思っています。

「守破離」

モノづくりに興味を持ち、2004年にサラリーマンを辞め、家業でもある布団職人になってから18年、様々なことにチャレンジし、良い機会を頂いてきました。2011年に技能グランプリで優勝し、日本一になり、それから11年間色々と自分なりに経験し、2022年に現代の名工になる事が出来ました。

私は「守破離」という言葉が好きで、その精神を持って様々なことをやっていこうといつも考えています。

「守」父の教えを守り続けた布団職人としての在り方

「守」は父の教え、基本的な考え、技術、とにかく基本に忠実に行う事だと思う。それがあって布団職人の技能の中では7年という最短で日本一になることが出来ました。これは父の技術は間違いないものだと確信した瞬間でした。

「破」新たな仲間と出会い、新たな自分自身と向き合う

転機となったのは、NYに行った時でした。寝具を販売するお店がとても格好良く、まだ日本にはこういった価値観で仕事をしている人がいないと思い、それから店作りや伝え方、様々な価値観を考えるようになりました。そして寝具以外のインテリアだけではなく、アパレルの方やデザインを生業とする方々と仕事をするようになっていきました。元々モノが好きという事で、多くの方との共通した話題があった事も偶然にも良かったと思っています。その位から布団職人という括りから一つ抜け出せた気がしています。この時期から「破」ということが出来てきたのだと感じる様になりました。

LEXUS NEW TAKUMI PROJECTに選ばれた事で全国にモノづくりの仲間が出来ました。日本中にいる同世代の職人・作家・デザイナーと出会えたことは私にとってはとても刺激的なことで、新たなプロダクトが創造出来た事も布団職人としてもやり切る事が出来たと感じたのです。
それから2019年LONDON CRAFT WEEKに参加した事で一気に世界への興味の広がりを見せました。今でもロンドンとの繋がりは続いており、本当に良い機会に巡り会えたと思っています。

布団職人という枠組みを破ることが出来ているのはいつも一緒に語り合うことが出来る仲間がいるお陰です。もちろん布団職人、メーカー、組合の方など寝具業界の方々が居たからこそ私は新しい挑戦が出来ていると思っています。

「離」積み重ねの再認識、そして次のステージへ

今回、現代の名工を受章した事で、次の「離」のステージに向かって今後頑張っていきたいと思っています。何をしたら良いかまだ決まっていないのですが、考えるだけでワクワクしてきます。布団を作るだけでなく、その技術を活かし、様々なことにチャレンジしたことが今回の受章に繋がったと言われました。これは本当に嬉しく、自分の考えてきたことが間違ってなかったと再認識することが出来ました。