五代目の挑戦

  • Japan House London
    Spotlight on Local Japan 2024

ロンドンのジャパンハウスとアイルランド・ダブリンの日本大使公邸にて
布団の文化と歴史に関する講演、製作実演を行いました。

ジャパンハウスロンドンでの企画に至るまで

新たなプロジェクトの可能性

今回、ジャパンハウスでの企画に参加するきっかけとなったのは、昨年ロンドンクラフトウィーク(LWC)に参加した際、otherproJectionsのマレンさんと知り合ったことでした。 彼女から、Japan House Londonに「Spotlight on Local Japan」という企画があるので、提案書を出してみてはどうかとアドバイスをいただいたのです。

愛知の布団文化を再認識する

私は「布団と愛知の魅力とは何か」を改めて考えました。愛知は古くから繊維産業が盛んな地域であり、木綿の伝来地でもあります。この歴史を踏まえ、布団という日本人にとって馴染み深い日用品にどれだけの価値があるかを伝えることに意義を感じました。 また、20年ほど前に初めてイギリスを訪れた際、「FUTON」という言葉を目にしたことも記憶に残っています。布団という言葉はすでにロンドンでも認知されているのではないか、という思いが企画に対する自信につながりました。 数か月後、ジャパンハウスロンドンから「企画が採用された」との連絡を受け、プロジェクトがスタートしました。 さらに、JNTOロンドン事務所の方から「ダブリンの日本大使館にも提案してみては」とアドバイスをいただき、これも実現する運びとなりました。

ジャパンハウスロンドンでの講演と実演

今回のテーマは「布団」という大きな枠組みの文化発信です。そのため、私が手作りする木綿布団だけでなく、量産型の布団についても触れることにしました。幸いにも技能検定委員としての経験があるため、さまざまな布団について知識を深めることができ、それを活かして幅広いお話をしました。布団を「木綿布団」という一つのカテゴリーとして捉えつつ、普遍的な日用品としての布団全体に焦点を当てました。 ロンドンに到着後、ジャパンハウスで打ち合わせを行いました。以前から訪れていたこの場所で、自分が布団や座布団を作り、講演することになるとは思いもしませんでした。そのため、一層力を尽くそうと決意しました。

布団文化の多様性を発信

講演「The History and Craftsmanship of Futon by Niwa Takuya」

講演では、布団の歴史や活用方法、量産型と伝統的な布団の違い、布団職人の現状と未来など、幅広いテーマをお話ししました。イベントの後半では、ZEN ZABUTONの製作実演を行いました。綿を幾重にも重ねて座布団を形作る様子は、ロンドンの方々にとって新鮮で興味深いものだったようです。

布団の歴史と未来を語る

ワークショップの様子

2日目と3日目には、座布団作りのワークショップを開催しました。現地の方々は初めて目にする作業に熱心に取り組み、楽しんでいただけたと感じました。特に裁縫が得意な方が多かったのが印象的でした。ワークショップでは、技術を見て体験することで、作り手の思いや技術の重要性を感じていただけたと思います。私自身も多くを学ぶ良い経験となりました。

参加者との交流がもたらす新たな発見

布団製作の実演

最終日には布団の製作実演を行い、目の前で布団が完成していく工程を見ていただきました。これまでロンドンで座布団の実演を行ったことはありましたが、布団の実演は初めてでした。綿を組み立てる過程を通じ、布団がただ綿を詰めるだけではなく、繊細な技術の積み重ねであることを知っていただけたのではないかと思います。

布団の奥深さを伝える瞬間

アイルランド・ダブリンでの活動

JNTOの方の紹介を受け、ダブリンの日本大使公邸にて講演と実演を行いました。内容はジャパンハウスでの講演をベースにしつつ、布団を実際に作りながら進める形式を取りました。特に、綿を埋める作業や「くける」作業の際、場の空気が静まり返ることがあり、工夫しながら進行しました。実演後には、大使公邸での会食にも参加させていただきました。

大使公邸での講演と実演

丸山大使をはじめ、担当の中田さん、Joseph Walsh Studioの職人の方々、韓国大使ご夫妻との交流は貴重な機会でした。

ロンドンとダブリンでの活動を終えて

布団文化の多様性を再認識

ロンドンでは、FUTONという言葉がSUSHIやUDONと同じように広く認知されていることを実感しました。ただ、今回紹介したのは、それらとは異なる日本の伝統的な木綿布団です。実際に仕立てる様子を直接見ていただけたことは、非常に意義深いものでした。私は、多様な布団があることで文化としての広がりが生まれると考えています。今回の活動を通じ、その多様性が文化として根付く意義を再認識しました。そして、日用品としての布団がさらに広がる可能性を改めて感じることができました。ロンドンとダブリンでの活動は、私にとっても大変意義深いものとなりました。