London Craft Week 2023
London Craft Weekの参加に伴い、新たなプロダクトの開発に取り組むことになりました。2019年と同様に尾州の毛織物を使用し、「Zen Futon」という様々な使い方が提案できるデイベッドを制作することにしました。
このデイベットは、細い布団の上に座布団と肘掛けを組み合わせることで、様々な組み合わせが可能となるようにデザインした。このアイデアは以前、座布団を2枚重ねて寝ている人を見た際に思いつき、座布団だけでは薄くて寝心地が悪いと感じたため、座布団の下に大きな布団を敷き、肘掛けを枕に使えるようにした。また布団を折り畳むことで別の使い方もできるように考えた。
前回の渡英時に行った調査で、心を落ち着かせるためにメディテーション(瞑想)を行う人が多いことを知り、そこで今回のプロダクトでは様々な形に変化し使い方の幅を広げることを考えました。また、日々の暮らしの中で人々が大切にすることや心地よい時間を過ごすことを想像し、そのニーズに寄り添えるプロダクトを作りたいと思いました。この「Zen Futon」は、メディテーションだけでなく、日中の昼寝や集中して考え事をする際にも活用できます。さらに、リラックスしたい時にも心地よい自分だけの空間を作ることができ、日常の様々なシーンで使い心地と機能性を追求し、快適に過ごせるプロダクトに仕上げました。
生地の選定では、一宮の中伝毛織と葛利毛織物の豊富なバリエーションから最適な素材を厳選し、それぞれのプロダクトに適した特性を考え、耐久性や快適性を追求した。また、色や織にもこだわり、インテリアに調和する美しいデザインを実現しました。使い心地が良いだけでなく、生活に馴染みながら上質な表現ができる生地を選ぶことにしました。
瞑想を行う際に心地よい姿勢を保つ。床との間に配置する座布団は、快適な厚みと柔らかさを備え、背筋をサポートしながらリラックスした姿勢を促します。瞑想の時間がより深く集中できる環境を作ることができます。
リラックスしたい時や疲れた時に、短い昼寝をする。土台となる布団を敷き、座布団と肘掛けを組み合わせることで、体全体を優しく包み込む寝心地を実現します。快適な休息ができる場を作ります。
集中して行う作業や読書にも最適。そば殻がふんだんに使われた肘掛けにPCを置いたり肘を乗せたり、正しい姿勢を保ちながら長時間の作業に取り組むことができます。ゆっくりと考える時や疲れた時にも安心して体を預けることが出来ます。
心身をリフレッシュする。布団と座布団、肘掛けを組み合わせることで、ゆったりとくつろげるスペースを作ることができます。しっかりと体を支える素材やクッション性の高い素材を選び、体を優しく支えながら心地よい休息をする事ができます。
展示会の会場として選ばれたNOBU HOTEL LONDON SHOREDITCHは、松久信幸さんが経営するホテルであり、日本のプロダクトとの相性も抜群でした。設えに調和し、プロダクトの魅力を引き立てる空間となりました。
展示会では、来場者の方々に実際に「Zen Futon」を試していただき、その使い心地や機能性を体験してもらいました。多くの方々から好評をいただき、高く評価されました。
快適さやデザインの優れた点に加えて、瞑想や昼寝、作業、休息など様々なシーンで活用できる万能なプロダクトとして高い評価を得ることができ、暮らしに寄り添うプロダクトとして受け入れていただけました。また改良や新商品の開発に活かせるアイデアをいただき、そのフィードバックを真摯に受け止め、今後に活かしていきたいと思います。
London Craft Weekは、世界中からクラフト愛好家やデザイナーが集まる国際的なイベントです。イギリスだけでなく、ヨーロッパやアジアなど、多様な文化や技術が交差する場として注目されていて、この舞台で職人・作家・デザイナーは作品を披露し、技術の継承と革新を追求しています。また、このイベントは参加者間の交流と共有の場でもあり、新たなクラフトの可能性を探求するコミュニティが形成されています。次回のLondon Craft Weekも大いに盛り上がることが期待されると思います。
2019年にロンドンを訪れて以来、4年間でロンドンの方々との繋がりが深まったことを振り返ると、SNSを通じて伝えたいことや取り組みは伝わっていると思います。しかし現地に行き、実演し、語り、プロダクトをリアルに体感してもらうことが一番効果的だと再認識しました。この経験から、日本国内でも同じ気持ちを持ちながら職人としてふとん作りに励んでいきたいと思います。職人としてモノづくりをする事や新商品の開発を通じて経験する中で、1人では到底辿り着かないことを知り、多くの方々のサポートがあったおかげで実現できたと感謝しています。そして、今回の開発や展示に至るまでの道のりを振り返りながら、まだまだ新たな取り組みをしていけることを見出すことが出来ました。職人が持つ技術の魅力を今後も伝え続け、暮らしに寄り添うプロダクトとして、多くの人々に受け入れてもらいたいと思っています。